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数学史、整数論、数学オリンピック、未解決問題・・・をわかりやすく証明を通して解説していきます。

2008年日本数学オリンピック予選問題 第十問

またまた、難問が続きますな~

今は、仕事の為に、数学は少し休憩しようかなと弱音を吐いておりますが、何のこれしき・・・

これくらいで、「あきらめてどうするんだ」と自分に鞭を入れて、続いて問題を解いていきたいと思います。


(第十問)
08000003.jpg

まさに、「集合」「離散数学的アルゴリズム」という「数学オリンピック」の十八番のパターンですね。
予選問題にしては、少し難しいような気がします。(自分が苦手だからそう思うのか・・・)

円順列に関する問題は、「頭の整理」と「イメージ」に尽きるような気がします。


初めて問題を見る方は、一度、落ち着いて問題を解いてみることオススメします。


ちなみに言いますが、かなり解答が長くなります。

読む覚悟がある方のみ、続きを読んで下さい。

↓↓



では早速、解答していきます。


デタラメに考えて、数えたって仕方がないので、まずはきちんと整理します。

まずは席に番号を1から4016まで半時計周りに番号をふっていきます。
(1の人が右隣が2になるように)
問題は男子、女子に関して対称となっているので「1」の番号には男子が座っているとする。

図にするとこんな感じ。
08020401.jpg

解答だけを書いていくのは簡単なので、順に思考をたどっていこうと思います。


「持っているプレゼントを全員同時に右隣の人に渡す」という動作n回を「n回の試行」とします。


○「1回の試行」で、題意を満たす状態になる時


1回の試行で、男子と女子のプレゼントが逆転したという事は男子女子が交互に座っている場合しかありえない。
これは容易に推測できる。

1の席には男子が座っているので、2の席には女子が座っている
2の席には女子が座っているので、3の席には男子が座っている
3の席には男子が座っているので、4の席には女子が座っている・・・

08020402.jpg

ちなみに●が男子、女子が○

これを繰り返すと最後、4016の席には女子が座っているので、この座り方は題意を満たす。

よってこの場合は1パターン。


○「2回の試行」で、題意を満たす状態になる時

これも同様に考える。

1の席には男子が座っているので、3の席には女子が座っている
3の席には女子が座っているので、5の席には男子が座っている
5の席には男子が座っているので、7の席には女子が座っている・・・

08020403.jpg

これを繰り返すと、4013には必ず男子が、4015には必ず女子が座っている。

注意してほしいのは、1の席には男子が座っているので、自動的に奇数番に座っている人の性別は決定しているという事だ。

そして、4015に座っている女子がプレゼントを渡す1の席には男子が座っているので、これは題意を満たしている。

次に偶数番の席を考える。

2の席に男子(女子)が座っていれば、4の席には女子(男子)が座っている。
4の席に女子(男子)が座っているので、6の席には男子(女子)が座っている。

という事は、これを繰り返すと4014には男子(女子)が座り、4016には女子(男子)が座っている。

そして、4016に座っている女子(男子)がプレゼントを渡す2の席には男子(女子)が座っているので、題意を満たす。

よって、この場合の席の座り方は「2の席に男子が座る」か「2の席に女子が座る」という2パターンしかない。
(題意を満たすように座るには、この場合、1の席と2の席が決まれば全ての席が決定されるという事実に注目してほしい)


ここで、また注目してほしい。

「2回の試行」で題意を満たす状態になる座り方を数えた時、「1回の試行」で題意を満たす状態になる座り方をダブって数えていないか?

「2回の試行」で題意を満たす状態になる時、3の席は必ず女子が座る。
しかし、「1回の試行」で題意を満たす状態になる時は、3の席が必ず男子になっている。


という事は、「2回の試行」で題意を満たす状態になる座り方と、「1回の試行」で題意を満たす状態になる座り方はダブっていない事が分かる。

しかし、この2通りは実は同じ座り方になっている。
円順列で考えると、「男子、男子、女子、女子、男子、男子、女子、女子、・・・」という座り方になる。


よって、この場合は1パターンの座り方がある。


○「3回の試行」で、題意を満たす状態になる時

先ほどと同様に考える。

1の席には男子が座っているので、4の席には女子が座っている
4の席には女子が座っているので、7の席には男子が座っている
7の席には男子が座っているので、10の席には女子が座っている・・・

08020404.jpg

これを繰り返すと、4015には必ず男子が座っている。
そして、4015に座っている男子がプレゼントを渡す2の席には女子が座っていなければならない。

08020405.jpg

2の席には女子が座っているので、5の席には男子が座っている
5の席には男子が座っているので、8の席には女子が座っている・・・

08020406.jpg

という事は、4016には必ず女子が座っている。
そして、4016に座っている女子がプレゼントを渡す3の席には男子が座っていなければならない。

08020407.jpg

3の席には男子が座っているので、6の席には女子が座っている
6の席には女子が座っているので、9の席には男子が座っている・・・

08020408.jpg

という事は、4014には必ず女子が座っている。
そして、4014に座っている女子がプレゼントを渡す1の席には男子が座っている。これは題意を満たす。

しかし、ここで注目してもらいたい。

「3回の試行」で、題意を満たす状態になる時というのは、1の席が決まった時点で全ての席が決まっているのである。
という事は座り方は1パターンなのだ。


また、この時の座り方というのも「男子女子が交互に座っている」という「1回の試行」で、題意を満たす状態になる時と同じになってしまう。

というのは「席の番号を6で割った時の余りが1、3、5の席には男子が座り、余りが0、2、4の席には女子が座る。」という事になる。

これは「奇数席に男子が座り、偶数席に女子が座る」という「1回の試行」で題意を満たす状態になる時と同じになるのである。

という事で、この時は0パターンとなるのである。


ここまででも、大体の傾向というものを感じてこれたのではないかと思う。



○「4回の試行」で、題意を満たす状態になる時

1の席には男子が座っているので、5の席には女子が座っている
5の席には女子が座っているので、9の席には男子が座っている・・・

これを繰り返すと、4013には必ず女子が座っている。
そして、4013に座っている女子がプレゼントを渡す1の席には男子が座っている。

08020409.jpg

ここまでは必然的に決まる事項である。

しかしこの辺りでもう、一定の傾向を感じているのではないかなと思う。

要するに
2に男子(女子)が座っていれば、4014には女子(男子)
3に男子(女子)が座っていれば、4015には女子(男子)
4に男子(女子)が座っていれば、4016には女子(男子)が座ることになるのである。


よって、2、3、4のそれぞれの席に、男子か女子かどっちかが座る事で、全ての座席が決定してしまうということで
(2の3乗)=8通りの座り方がある。

しかし、ここで「1回の試行」で題意を満たす状態になる時と「2回の試行」で題意を満たす状態になる時と座り方がダブっていないのか?

「4回の試行」で、題意を満たす状態になる時、5の席には必ず女子が座っている。

しかし、「1回の試行」で題意を満たす状態になる時と、「2回の試行」で題意を満たす状態になる時は、共に5の席には必ず男子が座っているのでダブって数えていることはない



また、ここで、調べなければならないのは、回転させた時に同じ座り方になる時があるのかどうかである。

「4回の試行」で、題意を満たす状態になるという事は、1~4の席と男女が逆になった5~8の席という8個の席を1セットとして、同じセットが502セット繰り返して続いている状態になっている。

しかし、
「4014、4015、4016、1が男子」
「4015、4016、1、2が男子」
「4016、1、2、3が男子」
「1、2、3、4が男子」
といった様に、1つパターンについて4つの数え方をしている。

08020410.jpg

よって、この場合は8÷4で2パターンとなる。



○「5回の試行」で、題意を満たす状態になる時

今までと同様に考えると、
1の席に男子が座っているので、6の席には女子が、・・・4016の席には女子が、

そして、5の席には男子が座り、10の席には女子が、・・・4015の席には男子が、
よって、4の席には女子、・・・4014の席には女子が。
3の席には男子、・・・4013の席に男子。
2の席には女子、・・・4012の席に女子。

そして、4012の席に座っている女子がプレゼントを渡す1の席には男子が座っている。

08020411.jpg

この座り方は題意を満たすが、「1回の試行」で題意を満たす状態になる座り方と同じになる。

これは「1回の試行」で題意を満たす状態になる座り方と「3回の試行」で題意を満たす状態になる座り方が同じになる考え方と同じである。

よって、この場合は0パターンとなる。



○「6回の試行」で、題意を満たす状態になる時

1の席に男子が座っているので、7の席には女子が、・・・4015の席には女子が、

そして、5の席には男子が座り、11の席には女子が、・・・4013の席には男子が、
3の席には女子、・・・4011の席に男子。

そして、4011の席に座っている男子がプレゼントを渡す1の席には男子が座っている。

これを同様に考えると、2の席に座る性別によって、残りの席に座る全ての性別が決定されてしまうのである。


要するに、「6回の試行」で、題意を満たす状態になる時というのは、「2回の試行」の時と同様で、「1の席と2の席が決まれば全ての席が決定される」ので、当然、座り方のパターンも「2回の試行」の時と同じになる。

よって、この場合も0パターンとなる。



この辺りで、ほぼ傾向が掴めたのではないだろうか??



・まず「4016」という数字と「互いに素」な数字の回数の試行の場合、必ず「1回の試行」と同じ結果が出ること

・「4016」と「6」の様な、約数倍数の関係ではないが、「互いに素」な関係でもない場合、既に出された結果と同じパターンになっていること

(「6回の試行」は「2回の試行」と同じ結果になる)


という事は、「2008」という数字の約数回の試行をした時のみ調べればいい事になるのだ。

2008の約数は、1、2、4、8、251、502、1004、2008

この8つだけ調べればオッケー
(ちなみに1、2、4に関してはすでに結果が出てます)



○「8回の試行」で、題意を満たす状態になる時

今までに試した事を利用して考えよう。

1の席には男子が座っているので、この時点で「席の数字を8で割った時の余りが1になる席」は全て、性別が決定される。

後は、2~8の7席に座る人の性別で、全ての席の性別が決定される。

よって、パターンとしては(2の7乗)のパターンがある。

「8回の試行」で、題意を満たす状態になる時は必ず、9の席には女子が座る事になるが、「1回の試行」「2回の試行」「4回の試行」の場合は、9が必ず男子になるので、数え方がダブる事はない。

また、(2の7乗)のパターンのうち、円順列の座り方なので、一つのパターンを8回数えているので、求めるべき組み合わせは

(2の7乗)÷8で16

よって、この場合は16パターンとなる。



○「251回の試行」で、題意を満たす状態になる時

「8回の試行」の時と同様に考える。

1の席には男子が座っているので、「席の数字を251で割った時の余りが1になる席」は全て、性別が決定される。

後は、2~251の250席に座る人の性別で、全ての席の性別が決定される。

よって、パターンとしては(2の250乗)のパターンがある。


ここからが今までと少し違う。

「251回の試行」で、題意を満たす状態になる時は、必然的に必ず、503の席には男子、1005の席には男子、2009の席には男子が座る事になる。

08020412.jpg

しかし、
「2回の試行」の時は、503の席は必ず女子が座る。
「4回の試行」の時は、1005の席は必ず女子が座る。
「8回の試行」の時は、2009の席は必ず女子が座る。


この事から、「2回の試行」「4回の試行」「8回の試行」の時と、ダブって数える事はない。

けれども、「1回の試行」の時とはどうか?

1の席に男子が座る事で決定される、252(女子)、503(男子)、754(女子)、1005(男子)、1256(女子)、1507(男子)、1758(女子)、2009(男子)、2260(女子)、2511(男子)、2762(女子)、3013(男子)、3264(女子)、3515(男子)、3766(女子)の席は全て、「1回の試行」の時と同じ結果になる。

2~251の席は、ランダムに決めることができるので
要するに、「1回の試行」の時とはまるっきりダブって数えているのである。

また同時に、(2の250乗)のパターンのうち、「1回の試行」の時の1パターンを除いて、円順列の座り方なので、1つの座り方に対して251回数えているので、求めるべき組み合わせは

{(2の250乗)-1}÷251となる。

※この数字は「フェルマーの小定理」より、整数となることがわかる。



○「502回の試行」で、題意を満たす状態になる時

考え方はさっきと全く同じだ。

1の席には男子が座っているので、「席の数字を502で割った時の余りが1になる席」は全て、性別が決定される。

後は、2~502の501席に座る人の性別で、全ての席の性別が決定される。


よって、パターンとしては(2の501乗)のパターンがある。

「502回の試行」で、題意を満たす状態になる時は、必然的に必ず、1005の席には男子、1507の席には女子、2009の席には男子が座る事になる。

08020413.jpg

しかし、
「1回の試行」の時と「251回の試行」は、1507の席は必ず男子が座る。
「4回の試行」の時は、1005の席は必ず女子が座る。
「8回の試行」の時は、2009の席は必ず女子が座る。


この事から、「1回の試行」「4回の試行」「8回の試行」「251回の試行」の時と、ダブって数える事はない。

けれども、「2回の試行」の時とはどうか?

1の席に男子が座る事で決定される、503(女子)、1005(男子)、1507(女子)、2009(男子)、2511(女子)、3013(男子)、3515(女子)の席は全て、「2回の試行」の時と同じ結果になる。

2~502の席は、ランダムに決めることができるので
要するに、「502回の試行」の座り方のパターンは、「2回の試行」の時の座り方をまるっきりダブって数えている

また同時に、(2の501乗)のパターンのうち、「2回の試行」の時の1パターンを除いて、円順列の座り方なので、1つの座り方に対して502回数えているので、求めるべき組み合わせは

{(2の501乗)-2}÷502となる。

※この数字も「フェルマーの小定理」より、整数となることがわかる。




○「1004回の試行」で、題意を満たす状態になる時


1の席には男子が座っているので、「席の数字を1004で割った時の余りが1になる席」は全て、性別が決定される。

後は、2~1004の1003席に座る人の性別で、全ての席の性別が決定される。

よって、パターンとしては(2の1003乗)のパターンがある。

1の席に男子が座る事で、1005(女子)、2009(男子)、3013(女子)のみが決定される。

08020414.jpg

しかし、
「1回の試行」の時、「2回の試行」の時、「251回の試行」の時、「502回の試行」の時、1005の席は必ず男子が座る。
「8回の試行」の時は、2009の席は必ず女子が座る。

この事から、「1回の試行」「2回の試行」「8回の試行」「251回の試行」「502回の試行」の時と、ダブって数える事はない。

けれども、「4回の試行」の時とはどうか?

「4回の試行」の時も、1005(女子)、2009(男子)、3013(女子)となる。

2~1004の席は、ランダムに決めることができるので
要するに、「1004回の試行」の座り方のパターンは、「4回の試行」の時の座り方をまるっきりダブって数えている。

また同時に、(2の1003乗)のパターンのうち、「4回の試行」の時の(2の3乗)パターンを除いて、円順列の座り方なので、1つの座り方に対して1004回数えているので、求めるべき組み合わせは

{(2の1003乗)-(2の3乗)}÷1004となる。

※この数字も「フェルマーの小定理」より、整数となることがわかる。



○「2008回の試行」で、題意を満たす状態になる時

1の席には男子が座っているので、「席の数字を2008で割った時の余りが1になる席」は全て、性別が決定される。

後は、2~2008の2007席に座る人の性別で、全ての席の性別が決定される。

よって、パターンとしては(2の2007乗)のパターンがある。

1の席に男子が座る事で、2009(女子)のみが決定されるという事である。

08020415.jpg

しかし、
「1回の試行」の時、「2回の試行」の時、「4回の試行」の時、「251回の試行」の時、「502回の試行」の時、「1004回の試行」の時、2009の席は必ず男子が座る。


この事から、「1回の試行」「2回の試行」「4回の試行」「251回の試行」「502回の試行」「1004回の試行」の時と、ダブって数える事はない。

けれども、「8回の試行」の時とはどうか?

「8回の試行」の時、2009は女子となる。

2~2008の席は、ランダムに決めることができるので
要するに、「2008回の試行」の座り方のパターンは、「8回の試行」の時の座り方をまるっきりダブって数えている。

また同時に、(2の2007乗)のパターンのうち、「8回の試行」の時の(2の7乗)パターンを除いて、円順列の座り方なので、1つの座り方に対して2008回数えているので、求めるべき組み合わせは

{(2の2007乗)-(2の7乗)}÷2008となる。

※この数字も「フェルマーの小定理」より、整数となることがわかる。



長くなったが、以上で全ての考察は完了した。


もとめる答えは

08020416.jpg

即ち、これを計算すると

08020417.jpg

これが答えとなる。



~一言~

数字としてはかなり巨大な数字である。

「頭の整理が全てを分ける」といわざるを得ない結果となった。

数学というものは本来、時間の制限というものは不必要なのかも知れない。
時間の制限がなくても、自分の能力次第で解けないモノは何時間かけても解けない。

離散数学が求める想像力と創造力の怖さが垣間見えたと言っていいと思われる。

正直言って、普通に難問でしたね・・・



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2008年02月04日 | 数学オリンピック予選 | トラックバック(0)件 | コメント(0)件



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プロフィール

オイラー

Author:オイラー
・得意分野
 整数論、解析学、幾何学
 複素数、数列 etc
・苦手分野
 行列、群論

質問、相互リンク等連絡があれば、kick_back_endless_shock◎yahoo.co.jpまでお願いします。

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